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って教えて下さったのだろう」と不思議に思いました。あのときは、八ミリカメラで指導の先生が写してくれ、その一コマを見ては感激したものでした。子供も本当に嬉しかったでしよう。
成長するにつれ、「お母さん、私の耳どうして聞こえないの」と聞かれ、前文に書いたように、そのときの状況を胸の詰まる思いで話したら娘が、「私、小さいときに我がまま言ってごめんね、お母さん大変だね」と言ってくれました。
優秀な先生方の教育、指導を受けたお陰で、昭和四十五年三月一小・中・高等部一を、めでたく卒業できました。また、思ってもいなかった「川本口話賞」を頂き、新聞紙上にも載った時の嬉しさ、可愛がってくれたお祖父さんの、あの嬉しそうな顔がいまだに忘れることができません。
卒業後、和裁の勉強をしたいとのことで、和裁の先生と両親とで東京へ行き、いくつかを見学させてもらい、「ろうの人を預かるのは初めてだ」という目黒区の研究所の先生宅に住み込み、山形ろう学校の二人が勉強することになりました。私は言葉は通じなくとも、「心と心は通じ合える」と信じて先生にお願いいたしました。ただ残念なことに、一人は途中でやめてしまいました。
先生や皆さんの指導と協力に支えられ、ときには健聴者と一緒で辛いこともあったと思うが、五年間の修行を終え、三越デパート専門の受注として女優の寺島純子さんの着物を手掛けさせて頂き、和裁技術検定二級を取得して卒業しました。

 

 

 

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